時間連鎖
「はあ?」
「だってそうでしょう?命の危険は確かにないと思うわ。それに命の危険だなんてそこら中にあるもの」
「なら、どうして?」
「明日、この現象は確かに終わるかもしれない。でも、終わらないかもしれない」
亜季は、自らを落ち着かせるように本を開く。かなり難しそうな科学の本だ。題名は『時間と空間について』。
「この現象が明日終わらないかもしれない、という事は、明後日も続くかもしれない」
「まあ、可能性はあるわな」
淳司もとりあえず亜季の隣りの椅子に腰をかける。
「明後日も終わらない、明々後日も終わらない……」
亜季の声は小さくなっていく。
「自分達で動き出さない限り、永遠に、この時間の矛盾は終わらないかもしれない」
「……!」
亜季の呟きに、淳司は背筋に冷たいものを感じた。
それがどれだけの苦痛かというのは、日常の生活に飽きを感じていた淳司にはよくわかる。それこそ毎日文字通り、全く同じ一日が何度も何度も無限に繰り返される……
(……冗談じゃねえぞ)
その悪態すら口にまで出てこない。
確かに、これは非日常だろう。
だが、毎日の繰り返される日常の生活が嫌で、淳司はドラマや漫画で起こるような非日常を願ったのだ。
にも関わらず、その非日常が『時間の連鎖』とは……皮肉というより、淳司にとっては悪夢と言っても良かった。